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映画『クラッシュ』-差別や偏見を考えてみる

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こんにちは!

 

今日は真剣に『差別』や『偏見』について考えてみたいと思います。

 

重いテーマですが、あくまでの個人的な見解による一般論ですので、だれかを批判したり傷つける目的のものではありません。ご理解ください。

  

 

差別や偏見って何?

 

『差別』や『偏見』は、人種のみならず、国家、文化、価値観、宗教、性別、性的嗜好、年齢、職業、社会的地位などなど、さまざまな要素と側面があります。それこそ、日本人同士の間でも存在します。

 

なぜ、差別や偏見は生まれるんでしょうか?

 

私なりに考えてひねり出した答えが以下です。

 

 

1)“違い”に対する恐怖

 

動物はみな自らと似た外見を持つものと一緒にいる傾向にあると聞いたことがあります。地理的条件などの理由もあると思いますが、人間もその例にもれず、同じ人種同士のカップルが圧倒的多数派ですよね。

 

知らず知らずのうちに、人はみな、外見のみならずいろんな要素や側面で、この人は自分と同じ、自分に近い、自分と違うと分類しているような気がします。

 

そして、それらがまったく“違っている”場合、好奇心の対象となったり、恐怖心を抱いたりするのではないでしょうか。「得体のしれないものは怖い」っていうシンプルな感情です。

 

 例えば、白人しか住んでいないエリアにアジア人がひとりまぎれていたら、「ジロジロ見られた」というのは、このカテゴリーなのでは・・・。

 

 

 2)“自分が正しい”という思い込み

 

人はみな、自分を基準に物事を判断してしまいがち・・・。

 

文化や価値観、宗教などが背景にある差別や偏見は、基本「自分は正しい、相手は間違っている」という思い込みからきているのではないでしょうか。

 

あの人の文化や価値観は、自分のものとは違うけど、それはそれでありで、正しいも間違いも、良いも悪いもない、というスタンスでいれるおおらかさや柔軟性があれば問題は少なくなる気がします。

 

 

3)メディアによる“ステレオタイプ”化 

 

ブラジル人の友達がときどき「日本人はいつも目を閉じてる(くらい目が細い)」というジョークをぶっこんできます。悪気がないとわかっていてもいい気持ちはしません。

 

ほかにも日本人に対する海外のイメージは、「働きすぎ」、「男尊女卑」、「オタク」など、日本人女性に対しては「貞淑」だけど「白人男性に弱い」などがあります。

 

ニューヨークタイムズ紙は、アメリカ合衆国における代表的なステレオタイプとして、「貪欲なユダヤ人」、「卑劣な中国人」、「馬鹿なアイルランド人」、「怠惰な黒人」を挙げています(ウィキペディア参照)。

 

日本人でいうなら、「江戸っ子は口が悪くて人情にあつい」とか、「大阪人はお笑い好きのいらち」とかの県民性分析や、「B型の人はマイペース」だの、「O型はおおざっぱ」だのという血液型診断が大好きですね。

 

メディアなどで繰りかえしステレオタイプが描かれると、知らず知らずそういうもんだとイメージが定着してしまいます。

 

 

4)自分の体験に基づく“グループ”化

 

例えば、一人の黒人が強盗をはたらいたとします。そのとき、店番をしていて恐ろしい目に遭った白人は黒人=強盗=悪い奴らと、すべての黒人をひとつのグループとして捉えてしまう・・・。

 

太平洋戦争で日本と戦い戦友を失った元アメリカ兵は、今でも日本人が嫌い・・・とか・・・。

 

ここ数年の新入社員全員が1年以内に会社を辞めてしまった。たまたま、その部署だけでの話なのに、部長は自分の責任も顧みず、「最近の若者は長続きしない」と、その世代すべてをひとくくりにしてしまう・・・。

 

よくありそうなことだと思いませんか。

 

 

5)教育の欠如・洗脳

 

政治家や宗教家は、国民や信者をコントロールするために、特定の国や人種などに対して、ネガティブで差別的なイメージを植え付けることがあります(もちろん、すべての政治家や宗教家の話ではありません)。

 

ネガティブなマインドは、ときに大きな原動力や結束力の源になり、民意を動かすのに都合が良かったりする・・・。

 

それにくらべ、他人の善意を信じたり、冷静に客観的に物事を判断するのはとても難しい・・・子どもたちには、偏りのないフェアな教育を受けさせてあげたいですね。

 

また、子供たちは親の価値観に強く影響を受ける気がします。大人が手本となるべきだと思います。

 

 

6)実体験の欠如

 

実態を知らない人や部外者による批判や正義ほど厄介なものはないと思います。そんな人たちにかぎって、自分は正しいと思いこんいるから手がつけられません。

 

差別や偏見を持つ人も立場が変われば、それに気がつくのではないでしょうか。

 

ニュースか何かで観たのですが、特殊装置やVRを使って、『男性に女性が出産のときに感じる痛みを体験してもらう』、また『若者に高齢者の筋力や視力を体験してもらう』という企画がありました。

 

体験した人は、「出産はこんなにも過酷なのか!」、「高齢者の生活がこんなにも大変なものだとは!」と驚く一方で、女性や高齢者を尊敬し、やさしい気持ちになれたと言います。

 

異国や異文化に飛び込み、経験することで、今まで知らなかった世界が拓けるのでは・・・経験ほど貴重で強い武器はないと思います。

 

 

7)ネガティブな事実を差別・偏見にすり替える⁉

 

弱い立場の人、切羽詰まった人は、「不都合な事実」を突き付けられると、「差別」や「偏見」にすり替えることがあります。

 

例えば、アメリカの会社では、自分に落ち度があってクビになったとしても、「人種差別」だと訴える人がいます。

 

生き延びるため、自分を守るため、家族を守るため・・・理由はさまざまだと思いますが、そこまで追い詰められた経験がないので、何とも言えません。

 

生まれた環境や国が劣悪で、限界まで追い詰められたとき、今と同じ道徳心を持ち続けられるか・・・正直自信がないです・・・。

  

ほかにも、人間のエゴ・・・する側とされる側の優越感や劣等感が複雑に絡み合い、差別や偏見として現れているケースもありそうです。

 

 

誰もが差別や偏見を持っている?

 

つづいては、私が実際目の当たりにした差別経験です。

 

 

1)You are not welcome!って・・・💦

 

アメリカに来た当初(2000年)の話です。ソーシャルセキュリティーオフィスを訪ねると、担当者に「おまえにはカードは発行しない!国に帰れ!!!」と門前払いされました。

 

もちろん、アメリカで税金を払うためにもソーシャルセキュリティーの登録は必要で、権利のみならず義務を果たすためでもあったのに、「アメリカはお前を歓迎しない」と言われ、悲しい気持ちになりました。

 

その日はそのまま帰り、後日出直すと、若い女性の担当者がすぐに手続きをしてくれました。

 

私を追い返した年配の男性は車いすに乗っていたので、昔、戦争に行って日本人が嫌いになったんだと勝手に想像しています。

 

 

2)「黒人とだけは結婚してくれるな」

 

父の言葉です。当時「医者と結婚するのが一番幸せなんだ」と言うくらいの人ですから、驚きはしませんでしたが、やはり悲しい気持ちにはなりました。

 

どんなに娘が心配だとしても、子どもとしては、親に理想やきれいごとを語ってほしいものです・・・。

 

そんな父親も10年前にアメリカに移住してきて、日本では経験しなかった苦労をしているようです。いろんな人たちに影響されながらかなり変わりました。キッチンに立つことなかったのに、食器洗いをしたり、バーベキューでステーキを焼いたりしています。

 

差別する側(マジョリティー)から、される側(マイノリティー)に立場が代って、感じることがあったのかもしれません。

 

 

3)私の中にも偏見があった⁉

 

我ながら驚いた経験があります。私は、自分には差別や偏見はないと思っていました。

 

2002年(今から16年前)、たしか当時人気だったエミネム主演の『8Miles』を映画館で観ていたときだったと記憶しています。スクリーンいっぱいに多数のアフリカ系アメリカ人が映し出されたとき、なんとも言えない圧迫感を感じました。

 

真っ暗な場所で、真っ黒なスクリーンが怖かった・・・。それが閉所恐怖症なのか、差別や偏見によるものかはわかりませんが、自分で自分に疑問を抱いた瞬間でした。

 

また、2005年、アカデミー最優秀映画賞の呼び声が高かった『ブロークバック・マウンテン(Brokeback Mountain)』を観ていたときは、男性同士の激しいラブシーンに、耐え難い嫌悪感が体の内側から湧き上がってきました。

 

「もしかして、私、ホモフォビアなの⁉」とショックでたまりませんでした。

 

 

 4)弱い心と闘ってこそ人間

 

誤解がないように言うと、これまで特定の個人に対して、人種やセクシャリティーにを理由にネガティブな感情を抱いたことは一度もありません。

 

しかしながら、映画を観て動揺した経験により、差別や偏見を持つ人の気持ちが少しわかった気がしました。理由は特にないけど・・・なんかヤダ、生理的にちょっと・・・そういう感情って誰にでもありますよね?

 

でもきちんと教育を受けた大人なら、そういうわけのわからないことに流されちゃいけないと思うんです。ましてや、差別や偏見を正当化してはいけない!それだけはわかります。

 

 

おすすめの映画『クラッシュ』

 

ロサンゼルスが舞台の映画で、いろんな人種の世界を疑似体験したい人におすすめです。

 

 

この映画の脚本・監督であるポール・ハギスは、彼自身がカージャックされた経験からこの物語を思いついたそう。主人公はおらず、何人かの主要人物の視線で彼らの物語を描いている群像劇です。

 

本命と称されていた『ブロークバック・マウンテン』を押さえ、アカデミー賞最優秀作品賞に輝きました。

 

以下、多少ネタバレがあるかもしれなので、もしこれから映画を観ようとしている方はご注意を!

 

主な登場人物は・・・黒人二人組にカージャックされ人間不信になる白人女性、黒人蔑視の白人警官、その警官にセクハラまがいの嫌がらせを受ける黒人女性、国家権力の前に妻を守りきれない黒人夫、ギャングのようなルックスから常に疑われるヒスパニック系の鍵屋、人々が自分たちを敵視しているとパラノイアの中東系移民、その父を助け案じる娘、どこかそっけないアジア系保険屋・・・。

 

私は、登場人物ほぼ全員に感情移入することができました。通常、表には見えない彼らの素顔や置かれている状況を細かく描写していたので、彼らの本質を理解し、共感することができた・・・。たとえ、許しがたい言動があっても、そうならざるを得ない理由が垣間見れたのです。

 

だれもが持っている日常の苦悩や家族との軋轢、ちょっとした懐疑心や優越感を通して、偏見や差別というテーマに切り込んでいるので、他人事だとは思えず、深く物語に引き込まれてしまいます。

 

明らかな善人や悪人は登場しません。

 

もし、他人を外見で判断したり、固定観念に左右されたりせず、ありのままを受け止め、善意を信じきれたら、回避できた悲劇も描かれています。

 

そして、差別や偏見の種は誰の心にも潜んでいるということ、人間はどんなに強くあろうとも、所詮弱いものだと気づかされます。だからこそ、暗く悲しい状況を変えるのは自分たち次第という希望も見えました。

 

 

最後に・・・

 

少し話はそれるかもしれませんが、2016年オバマ大統領が広島を訪れたとき、「よく来てくださいました」と感謝の意を表した被爆者代表の方・・・本当に強くて美しい人だと感動しました。ずうずうしくも、同じ日本人として誇らしく思いました。また、マイノリティーであるオバマ大統領だからこそ広島に来てくれたんだとも思いました。

 

まじめな話に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 

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